夢は夢より夢のまま

NEWSが好きな愉快なオタク。@k2k2_n

山口カズヤくんがしんどいはなし

2018年7月期のドラマ「ゼロ 一獲千金ゲーム」をご存知だろうか。カイジやアカギなどでもお馴染みの福本伸行先生の「賭博覇王伝 零」を原作とした、所謂デスゲーム作品である。ご存知でない方は毎週日曜日夜10時半〜日本テレビで絶賛放送中なので是非チェックして欲しい。

 

作中に登場する、NEWS・増田貴久くん演じる山口カズヤというキャラクターが尋常ではないくらいにしんどいので、僭越ながら思いの丈を綴らせて頂きたい。

まず私はNEWSのオタクだ。アニメゲーム漫画と一通りのものを通ってきたオタクだが、「ゼロ 一獲千金ゲーム」を語るにおいては、二次元作品も好きな原作未履修のNEWSファンという目線で語るので、内容に偏りが出てしまっても「ああNEWSのオタクなんだな」と多少大目に見てください。

 

それでは結論から言うと、闇の性癖を持ったオタクは全員Huluに登録した方がいい。 

【劣等感】【嫉妬】【焦燥】【執着】

このワードにピンとくるオタク、絶対いるでしょう? 分かるよ。だってオタクだから。

Huluでは現在、ゼロの見逃し配信及び、山口カズヤくんのスピンオフドラマの配信を行っている。その内容が、確実にそして念入りに闇のオタクの性癖を抉り取ってくるのだ。

「100%の努力をするも、1%の運やひらめきが足りないエリート」

「一番になれない秀才が、自分より実力の無いチームメイトに陰口を言われる(のを聞く秀才)」

「青春時代のトラウマを引きずり続ける成功者」

この中のどれかにオッとなった人。なんとこれ、Huluで絶賛配信中のゼロ 一獲千金ゲームエピソードZERO山口カズヤ編で全て味わえちゃうんです……

 

オイオイまさかそんなね? そんな盛り沢山なわけがね? あるんです。あってしまった。

Huluは月額税込み1007円。ランチセット1食分。漫画2冊分。十連ガチャの1/3。つまり実質無料。

いやいやでも1話のために1000円払うのも……という人。Huluは登録して2週間までならなんと無料で解約可能です! 実質どころか本当にタダ!! もしくはNEWSの手越祐也くん・小山慶一郎さん演じるキャラクターのスピンオフも配信予定なのでこの後実質得します。それでもちょっとなって思う人は絶対損しないので同じく配信中のHiGH&LOWを見てください。私のオススメは映画2作目のHiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKYなのでドラマが気に入ったら是非TSUTAYAで借りてください。GEOでもいいです。

 

ここから作品の内容についての多大なるネタバレも含んだ感想と妄想を書き散らすので、スピンオフをこれから見ようと思ってる人はご留意願います。視聴済みの人はこの気持ちを分かち合ってください。

 

 

◆ビジュアルについて

演・増田貴久。もはやこの5文字で全て伝わるのでは? 最高

増田貴久さん個人の魅力については、既に数多くの増田担さんが語られているので、そちらをご覧頂きたい。他担の私が深く語ってしまうのは野暮なものです。

ただ1つ絶対書いておきたいのは、増田貴久さん(32)(撮影当時は(31)?)が高校生役を演じています。最高

青春特有の顔って、曇りのないキラキラとどこまでも渦巻いたドロドロの二種類あると思っているんですけど、増田さんはその後者を素晴らしく演じられています。正直その表情だけでもう1007円以上の価値があります。

 

◆劣等感について

キャラクターの持つ劣等感が好きなオタクは確実に死ぬ。私は駄目でした。

 

外から見た山口カズヤくんは、人気アプリを開発したエリートで、テレビにも出てしまうような成功者だ。進学校の出身で、成績も優秀で所属していた水泳部ではリレーメンバーにも選ばれ……傍から見ると絵に描いたような順風満帆な人生を送っている。

しかしながらその内面は非常にドロドロとしたものを燻らせている。

 

その部分を語るにおいて絶対的に外せないのが、主人公・宇海零との関係性についてだ。

NEWS・加藤シゲアキ演じる宇海零は、ドラマ本編の時間軸ではうだつの上がらない塾講師として描かれているが、高校時代はテストでは満点で1位を取り、水泳部ではリレーのアンカーに選ばれるといった"天才"として描かれている。

一方の山口カズヤくんはテストでは2位、リレーのメンバーに選ばれるも、アンカーではない。つまり零に負け続けている。

客観的な事実のみで語れば、彼は間違いなくエリートだ。けれども、零に負け続けている事は彼にトラウマを刻み、現在の生き方をひどく歪めてしまっている。それが如実に表れている箇所が、前半の同窓会でのシーンの台詞だ。

「人生何でもいいからトップになんなきゃ意味ないよね」

お分かりいただけただろうか。彼は2位であった自分の事を「意味が無い」と切り捨てている。

「高校時代も成績優秀だった」「部活でもレギュラーだった」

そう昇華する事も出来ただろうが、彼はそれをしなかった。意味が無かったのだ。

 

彼のしんどさをより際立たせるのが、随所に挟まれる回想シーンが全て「零に抱いた劣等感」の思い出である事だ。

かつての同級生から「仲良かったよな」と言われたり、零がリレーのアンカーを辞退した際に「一緒に泳げなくてごめんな、カズヤ」と名指しで謝罪をされたり、部活に一緒に行ったり……学校生活を送っていた上で、少なくとも零からは友人としての行為を持たれ、仲が良かったとされるほどには行動を共にしていたのだろう。それでありながら山口カズヤくんは零への劣等感の炎を燃やしていた。しんどい。

 

燃やされ続けた劣等感は、やがて高校を卒業した後も鳴りを潜めていた。

それが噴出するきっかけになったのが、天才・向井シオンの登場だ。

向井はスタンフォード大学を18歳で卒業し、仕事面も有能で水泳もカズヤより速い。人望もある。絵に描いたような完全無欠だ。

各部署のエースを集めた新チームのリーダーに選ばれたカズヤの立場は、向井の登場により一気に転げ落ちる事になる。

まずリーダーの立場。向井の提案により、カズヤのリーダーの立場は一旦白紙となり、社内コンペの結果によって決められる事となる。その際にカズヤくんが零した台詞が最高にエモ。

「過去の実績は役に立たない……?」

エモエモのエモ。これ、過去の実績(=零と出会うまでの栄光)とも取れませんか?

進学校の中で2位の成績を持つカズヤくんは多分、中学までは1番だったのでしょう。プライドの高いカズヤくんはきっとそれが誇りだった。それが全て無になってしまったのが、零の存在。零に勝てないという事実が彼にトラウマを残した。どんなにそれまで他人に勝っていたって、"役に立たない"……。事実、過去の栄光に縋る描写は一切存在していないんです。あるのは負けたという事実のみ。高まる劣等感。しんどい。

 

つまりカズヤくんは、漸く掴みかけた"1番"を、またも天才の存在によって掴めないままでいる。

天才に永遠に勝てない秀才。劣等感萌えのあるオタクにとって最高のシチュエーションで最高にしんどい。

 

◆心の弱さについて

山口カズヤくんは、何というか、脆い。

プライドと実力を支えに、他者を見下すことでなんとか一人で立っている。その部分がよくわかるセリフが、残業してコンペの資料を作っているシーン。

「他人の脳を通したぶん、情報が劣化する」

「アイデアを盗まれる危険もある。こん中(頭)が、一番優秀で安全なんだ」

他人を信用していない事、そして自分の実力を支えにしてる事がよく分かる。彼にとっては仕事仲間も、アイデアを盗むかもしれない敵でしかない。自分とそれ以外。自分以外は全て敵。

そしてそれが反映されているのがラストシーン。個人的に最大級のときめきポイントです。増田さんの演技が本当に素晴らしかったので、全人類に見て欲しいし何に替えても円盤に収録して欲しい。

「俺と! あいつ(零)以外は全員カスだったからな!」

「何だ……? ここにもカスばっかだなァ!」

「お前もお前も! お前もお前も!!」

「お前ら全員カスだ」

「カスに正当な評価は出来ないからなァ」

台詞だけでしんどい。自分が評価されないのは周りがおかしい。周りは自分より劣っているから。そういう事を彼は言っている。

そして注目したいのは、零と同じく天才として描かれていた向井さんの事を「お前」と一括りにしている一方で、零の事はちゃんと「あいつ」と特別視しているところ。零への執着が彼の根底にあって、切り離せていないんですね。「俺とあいつ以外は全員カスだった」と、零の実力を認めているところもしんどい。向井さんに対しては、「フェアな勝負なら負けない」「ズルして勝った」と最後まで実力を認めなかった。でも零に対してはそうではない。零に勝てない事実をカズヤくんは認めている。

 そもそも、十年会っていない高校の同級生に対して、

「全部あいつ(零)のせいだ」

と責任を押し付けて執着し続けている所が最高に弱さの表れだと思う。

人のせいにするという事は、自分は悪くないと思っているって事なんですよね。自分は悪くない、悪いのはあいつだって。

傍から見れば子供の癇癪のようだけれど、彼にしてみれば十年間そうやって一人で生きてきたんですよね。しんどい。

 

◆アリサさんの存在

そして、山口カズヤくんには上司がいる。この上司・アリサさんの存在が彼のしんどさにより深みを出している。

「こら天才」

「超〜優秀な部下に助けられてばっかりだった」

と、彼の実力を彼女は度々言葉にして伝えている。そこから見えるものの一つとして、上司と部下の信頼関係があるが、もう一つ大事なものがある。それは、アリサさんが彼を肯定している存在であるという事だ。

 

作中で、カズヤくんが彼女にプロポーズをしたりと、好意を寄せている描写があるが、私はそうでは無いと思う。ここからはかなり主観的なものが混ざるが、どうか許してほしい。

序盤の、カズヤくんとアリサさんが食事に行くシーン。彼女は自身の夢を、結婚だと告げる。その際のカズヤくんの表情の変化。笑顔がスッと消え、目には軽蔑のような色が混ざる。心なしか彼女に寄せていた身体も一歩引いている。

しかし、次に続く彼女の言葉でまた彼の表情が変わる。

「あたしの夢は、とっても頭のいい人と結婚して、とっても頭のいい赤ちゃんを産むこと。自分よりも優秀な人材をこの世に送り出す」

前のシーンでは少し浮いていたような視線が、この言葉を受けて真剣な色を浮かべる。彼女のこの言葉、一見すると少し装飾が過剰だ。「優秀」である事を全面に押し出しすぎだ。だからそこには、多分意味がある。

アリサさんは優秀な人材と結婚したがっている。それはつまり、彼女と結婚する事は自分が優秀な存在であると、どんな言葉よりも最大限に認めてくれるということだ。

このことを踏まえると、プロポーズの言葉もまた違った見方になってくる。

「このコンペに勝ったら、俺と結婚してください」

「俺があなたの夢を叶える男だって……俺が一番優秀な男だって、俺は……あなたに証明してみせる」

 この言葉の肝になる部分が、前者ではなく後者……つまり、「アリサさんと結婚したいので、自分が優秀なことを証明する」のではなく、「自分が優秀なことを証明するために、アリサさんと結婚したい」として見えてくる。

つまり山口カズヤくんがアリサさんへ向けている感情は、恋愛感情ではなく承認欲求のたぐいだ。それを踏まえて、

「あの男に、乗り換えるつもりですか?」

終盤のこの台詞。ともすれば、いやいやそもそも付き合ってないし……となるが、それに続く

「あの男の方が優秀だと思った?」

も併せて見ると、セリフの見え方がまた変わってくる。「あの男に(恋愛対象を)乗り換えるつもりですか?」から「あの男に(優秀な男の座を)乗り換えるつもりですか?」に。

 

私あの、これに気づいた時ものすごくときめいたんですよ。前半は普通に恋愛していた山口カズヤくんが、後半になってトラウマを刺激されて狂ってしまったのではなくて、山口カズヤくんの本質は最初から最後まで一貫してたんだな……って。

 

◆予告について

皆さん本編2話の予告、見ましたか? もし見ていない人がいたらスピンオフと併せて見てください。

山口カズヤくんの「俺を信じろ!」って台詞。この言葉をどんな気持ちで彼は言ったのだろう……って考えるとめちゃめちゃ興奮します。

この言葉が嘘にしろ、本心にしろ、信じた先が正解にしろ、不正解にしろ。どんな組み合わせでもしんどさが約束されている。

嘘であれば彼がどんな激情を抑え込んでこの言葉を発したのか。本心であれば作中でどんな心境の変化があったのか。

予告だけでもうこんなにしんどいので、絶対的にスピンオフを見てから2話を見た方がいい。印象がぐるぐる変わる。

 

◆最後に

まず山口カズヤくんを演じてくださった増田貴久さん。本当にありがとうございます。そして監督さん、脚本さん、演出さんをはじめたスタッフの方々。本当にありがとうございます。そして何より原作者の福本伸行先生。本当に本当にありがとうございます。

私は原作付きの実写化やリメイク作品は元の作品を見ずに一度通しで見るタイプ(そして原作を読んだ後にもう一度通しで見る)なので、原作の「賭博覇王伝 零」は表紙の絵以外は何も知らない状態です。ので、ドラマ完走後に必ず原作を買います。必ず。

山口カズヤくんよ、幸せであれ。